生きとし生けるもの、
その全てが持つ

魔力

その魔力を使う事を生業とする、
魔法使い、

魔力を極めるものとなる為に、
少年少女は学び舎へと向かう。

その学び舎は、深き森に囲まれた地にひっそりと佇んでいる。
漆黒の森の奥に、風化して色身の落ちた灰色のレンガが積まれた、
まるで要塞のような外壁がどこまでも続く。
その外壁、高さにして10メートル。
その外壁は、どこにも入口はない。
向こう側へ行くには、箒、または空間移動で外壁を飛び越えるしか方法はない。

ここは、外界と隔離された土地、

名門ルナリア・シルヴァレスト学園

学園敷地内には、古代ローマ、コロッセオのようなドーム型の作りをした校舎があり、
その校舎の正面扉から左側を男子校舎、右側を女子校舎に分けている。
その境界には目に見えない光の壁が存在し、廊下で男女お互いの姿を確認し合えるも、
会話、接触が不可能である。

勤勉を共にする学び舎に、恋愛感情などは不必要。

そんな決まりがあるらしい。

ただ、唯一男女が会話出来る場として、
円形校舎の中央、渡り廊下(ミルキーウェイブリッジ)でのみ、男女の生徒同士は会話ができる。
それ以外の連絡手段は、伝書ハトを使った通信でのみだ。

生徒は皆、つつましく、立派な魔法使いになる為、
日々鍛錬を怠らない。
努力あるのみ!

と、魔法使いの学校にしては、やけに熱血的な校訓がある。

努力あるのみ!、と言えど、
ここにはいくら努力しようと、
それが全くと言っていいほど報われない生徒がいた。

それが、主人公、クリス=ワンダー。
この生徒、本当に、絵にかいたような劣等生であった。

ほうきに乗ってはあまりスピードが出ない上に、そのほうきになめられ、
物質転移の魔法は、そもそも物質が動きもしない。
調合するだけの魔法薬でさえ、分量を間違え、
攻撃魔法を出してみれば、100円ライターの方がまだ火力があり、
防御魔法をかけてみるも、雨傘の方がまだ攻撃を防げる位で、
本当に…、
不良ではないものの、てんでダメダメな生徒だった。

ただ唯一得意なことと言えば、動物と会話ができること。
動物学だけはトップクラスなのに…と、
教師の間でもクリスの劣等生ぶりは噂になっていた。

幼馴染みの彼女、マリーの助けを借りつつ、
彼はどうにか穏便に学園生活を送っていた。

そんな彼に、だ。

事件が起こる。

クリスによく似た不審人物が、学園内で大暴れしているというのだ。

クリスは、その偽物を見つけ出すことができるのか?

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